2018.05.30
早わかり!働き方改革・健康経営とは?これからの企業に必要な知識や対策についてご紹介します【事例あり】
目次
働き方改革と健康経営について
働き方改革とは?
働き方改革とは、労働力不足、生産性の低下、働き方の多様化など、国が直面している問題を解決するために政府の打ち出した施策であり、首相官邸のHP内では以下のように、解説されています。
“働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます。”(首相官邸HPより引用)
健康経営とは?
健康経営とは、「経営管理」と「健康管理」を統合的に捉え、経営視点で社員の健康推進を行うことで、企業の業績の向上などを目指すという考え方を基に成り立っています。
“健康経営(けんこうけいえい)とは、従業員の健康増進を重視し、健康管理を経営課題として捉え、その実践を図ることで従業員の健康の維持・増進と会社の生産性向上を目指す経営手法のこと。その始まりは、アメリカにおいて1992年に出版された「The Healthy Company」の著者で、経営学と心理学の専門家、ロバート・H・ローゼン(Robert H. Rosen)が提唱したことによるとされている。”(Wikipedia「健康経営」より引用)
働き方改革と健康経営の関係性
先にもご紹介した様に、日本企業の課題として生産性向上を実現するための取り組みが総称され、「働き方改革」と呼ばれています。
そして「健康経営」は働き方改革の要素かつべースともいえる経営戦略と位置づけることができるでしょう。
しかし、経営としては、働き方改革、健康経営と個別にその目的や方針を考えるのではなく、その全ては個々の従業員の生産性の向上であり、そのための健康維持が期待されています。
こうした取り組みに必要な経費を、”コスト”ではなく戦略的な”投資”と捉えることが、健康経営において重要な考え方であるといわれています。
また、例えば、「働き方改革」の中でも目玉政策である「残業時間制限」については、規定の時間を超えた場合、罰則が与える政策となっているのに対して、「健康経営」では、「健康経営銘柄」など国が企業にお墨付きを与える制度となっています。
上記の様な関係性により、「働き方改革」と「健康経営」はアメとムチの様な表裏一体制があるといわれており、双方の内容としては親和性が高く、2つそろえることでより効果が期待でき、企業価値評価が高まるとされています。
「健康経営銘柄」について
「健康経営銘柄とは?」
健康経営銘柄とは、経済産業省と東京証券取引所によって、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業に与えられる名称であり、以下のように解説されています。
“「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。
本取組では、東京証券取引所の上場会社の中から「健康経営」に優れた企業を選定し、長期的な視点からの企業価値の向上を重視する投資家にとって魅力ある企業として紹介をすることを通じ、企業による「健康経営」の取組を促進することを目指しております。
経営から現場まで各視点から健康への取り組みができているかを評価するため、「健康経営が経営理念・方針に位置づけられているか」「健康経営に取り組むための組織体制が構築されているか」「健康経営に取り組むための制度があり、施策が実行されているか」「健康経営の取り組みを評価し、改善に取り組んでいるか」「法令を遵守しているか」などの観点から評価を行います。”(経済産業省HPより引用)
・健康経営銘柄選定企業・事例1
株式会社ローソン
以前は、「マチのほっとステーション」というスローガンをよく耳にしたと思いますが、2013年にこれを「マチの健康ステーション」に変更し、「地域を健康でつなぐ場所」としての役割を目指すようになりました。
また、会社・健康保険組合・労働組合の三位一体の取り組みとして、全社員に向けた日々の健康管理を行う新保健事業「ローソンヘルスケアポイント2015」も始まりました。
健康診断の結果が出たら、各自が取り組むべき健康目標を自分で設定し、その達成状況に応じて、最大1万円分のポイントを付与する制度を導入し、開始3ヶ月で全従業員の95%が参加するという高参加率を記録したそうです。
健康への関わり方について個人レベルでの設定を行い、誰でも参加しやすい環境を用意したことが、良い循環を作った一例だといえます。
・健康経営銘柄選定企業・事例2
花王株式会社
花王では「よきモノづくり」の実現には社員が健康であることが必要という考え方を大切にしています。
そして、日頃から「ヘルスリテラシーの高い社員を増やす」ことを目標にし、PDCAサイクルで本人の健康度の向上を目指しているそうです。
また、35歳以上の社員に対して特定保健指導を健康保険組合から事業主側に委託し、内臓脂肪測定器を活用する等、徹底した健康指導を行っているのだそうです。
他にも、社員の生活習慣病の重症化を予防するために就業についての配慮基準を導入し、「健康マイレージ」というインセンティブ制度を設けたり、個々の従業員に合わせた対策をとるなど、複合的な施策を行っていることが特徴です。
さまざまな対策を施した結果、健康診断の結果も以前に比べて良好なものになったそうです。
・健康経営銘柄選定企業・事例3
テルモ株式会社
医療にかかわる企業として、従業員も高い健康意識を持つことの重要性を伝えるため、経営のトップ自ら健康経営を推進し、会社としてさまざまな取り組みを行っているそうです。
禁煙対策として、従業員だけでなくその家族まで含めてセミナーを開催したり、禁煙に成功した日数を数えるツールを用意したり、ゲーム感覚で家族と協力して禁煙に励める仕組みを作ったなどという例もあります。
また、企業の義務でもある健康診断に関して健康保険組合や医療スタッフと協力して、予防および早期発見に努めているそうです。
健康診断受診の推奨や費用の補助をする以外にも、健康を啓発するセミナーを開催するなどのサポートも企業として行うほかにも、従業員に向けての個別健康管理指導も実施しているとのことです。
効果
健康経営の増進は従業員の活力や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、業績や企業価値の向上が期待できると言えそうです。
改革前に行うべきこととは?
働き方改革の実施前に、何から手を付けるべきかをしっかりと見通すためにも、段階を追ってクリアを目指していくことが大切です。
具体的には以下の3つがポイントとなるでしょう。
会社の現状把握
まずは改革の第一歩として、自分の会社の状態を把握することです。
就業規則や雇用契約書などを用い、実際にそこに記載されているルールがしっかりと遵守されているのか調査していきます。
また、厚生労働省の提供する「働き方・休み方改善指標」を利用することにより、社員がどの様に働き、休みをとっているのかということを知ることができます。
その他、社員向けのチェックリストもあるので有効に活用することも可能です。
問題点の洗い出し・分析
現在の会社の状態を把握できたら、次は内容の分析です。
前述の「働き方・休み方改善指標」を使用している場合、「ポジションマップ」を活用し、自社の労働状況や各種休暇取得が正しく行われているかを調査します。
その上で、「レーダーチャート」を活用することで、改善するべき問題を洗い出すことができます。
改善するための対策検討
企業の抱える課題が明らかになったところで、次はどの様にその課題をクリアしていくかを考え、取り組み内容を具体的に策定していきます。
その際は、まずその取り組みを進めるためのルール作りなどの体制を整えるところからスタートします。
次に、経営幹部や一般社員を相手に取り組みを周知するアクションへとうつります。
ここでは、書類配布や研修を行うなど、取り組みの内容をしっかりと理解し、その上で労働環境を見直すことができる様な方法を取る必要があります。
事例
①非正規雇用者の処遇改善 イケア・ジャパン株式会社
きっかけ
日本の労働環境下では、性別によって働き方が制限されたり、一人ひとりの持つスキルや経験が生かされていないケースが多く、それを打破するために、まずは「同一労働・同一賃金」の考え方を取り入れることにしました。
取り組み内容
・全社員を正社員へ転換:全社員の7割近くになるパートタイム労働者を「短時間勤務の正社員」へ転換。
・有期雇用制度の廃止:全社員を「期間の定めがない無期での雇用」扱いとする。
同一労働・同一賃金制度の導入:職務記述書により、職種ごとに仕事の内容や責任を持つ範
囲が明文化され、同じ職務に就く労働者には同水準の業務が任せられる。また、仕事の内容が同一の場合は、賃金は時給換算で算出される。
・フルタイム正社員へのチャレンジ制度:短時間勤務の正社員がフルタイムで勤務する正社員へ転換することができる制度を導入。
効果
パートタイム労働者から正社員になったことにより、責任感やコスト意識が芽生えた。
社員の業務意欲が向上し、パートタイム労働者の離職率がこれまでの3割から半減した。
管理者側が、すべての社員に同じ指示やチャレンジ機会を与えられるようになった。
②長時間労働の是正 味の素株式会社
きっかけ
社長が、日本と比較すると短い総労働時間内で高い生産性をあげている海外の経営幹部の働き方を見たことで、日本の労働者が非効率な残業を重ねている現状への疑問を感じ、労働環境や価値観の変革を必要だと考えたことです。
経営陣が率先して改革を進めることにより、より成果が出ると考え、率先しての取り組みを行っています。
取り組み内容
一日の所定労働時間を短縮:これまでの労働時間より20分短縮し、7時間15分へと変更。
基本給の引き上げ:管理職を含む社員全体の基本給を1万円引き上げ、残業時間の短縮につなげる。
ペーパーレス化:経営会議の資料をデータ化し、タブレット端末で見る形に変更。資料の作成時間や議論に入る時間を短縮し、会議時間の削減を目標とする。
効果
これまで2時間かけていた会議時間が1時間15分ほどで終了するなど、労働時間を短縮し、効率の良い働き方を目指す上で一定の成果が出ているそうです。
また、今後はさらに7時間勤務にする方向で進めているそうです。
③柔軟な働き方へのシフト カルビー株式会社
きっかけ
本部にフリーアドレス制を導入したことでIT化が進み、インターネット環境を利用した社員同士のコミュニケーションの文化が根付き、対面での業務機会が減りました。
そして、営業社員の直行・直帰などのケースも増加したことも相まって、段階的に在宅勤務の導入をし、一定の成果が見られたため本格的な導入に至りました。
取り組み内容
労働者への周知を徹底:在宅勤務を分かりやすい形でマニュアル化し、上司から部下への働きかけを実施
人事・労務体制の整備:在宅勤務時のルールを徹底
業務プロセスの見直し・社内雰囲気の改善:スケジュールのオープン化や上司が率先して在宅勤務を行う環境を作り出す
効果
数名の男性労働者が育児勤務を取得した例や、通勤によるストレスから解放され、集中力の増加や業務の効率がアップしたという意見がみられたり、個の意志を尊重することにより結果的に働きやすい環境構築ができている様です。
その他では、在宅勤務申請者の残業時間が、申請していない者と比較すると2時間近く削減したり、自社が行う通信教育などの自己啓発に関する取り組みに対し、在宅勤務申請者の受講数が増加したりと効率的かつ発展的な動きも出ているそうです。
※上記3事例は、以下を参照いたしました。
参考webサイトリンク
まとめ
働き方改革が必要となった背景には、少子化に伴う人口減少や晩婚化による出生率の低下、長時間労働による過労問題などさまざまな要因があります。
今後は、さらに一人ひとりがそれぞれパフォーマンスを発揮できる働き方を選択し、社会全体の仕組みの改革を行っていくことが重要となっていくでしょう。
まずは、経営陣がしっかりと「どうすれば社員のやる気を引き出し、持続し続けられるのか?」ということを見据え、取り組みを牽引していくことが急務と言えそうです。
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